2010/02/17(水)
『歎異抄をひらく』は「永正本」をもとにしたと書かれていますが、『歎異抄をひらく』の「原文」と「永正本」にはいくつかの違いがありますので、気が付いたいくつかを指摘します。
(網羅しているわけではありません)
表記方法は
左側:『歎異抄をひらく』の原文←右側:永正本の記述
とします。
漢字・仮名の違い、仮名遣いについては無視します。
また送り仮名も多少の違いは省略します。(例:「乱るる」と「乱る」など)
ただし、永正本に漢字で書かれているものと違った漢字が使われている場合は記します。
★印は、永正本どころか他の主だった古写本にも、『歎異抄をひらく』の「原文」のような記述がないものです。
『歎異抄をひらく』独自の「原文」と思われます。
原文が違っていたら、解説にならないでしょう。
これでは「どちらが異端か」以前の問題です。
☆印は、比較的新しい写本(慧空本)や法要本、東本願寺仮名聖教にあって、永正本にはないものです。
中には意味が変わる場合もありますので、注意が必要です。
【序】
自見の覚悟←自見の覚語
【第一章】
善なきがゆえ←善なきゆえ
【第二章】
こころにくくおぼしめして~はんべらば←こころにくくおぼしめして~はんべらんは
かのひとびとにも←かのひとにも☆
地獄におつるべき←地獄におつべき★
自余の行を←自余の行も☆
愚身が←愚身の
【第三章】
生死をはなるることあるべからざるを←生死をはなるることあるべからずを
【第五章】
父母の孝養のためとて念仏一辺にても←父母の孝養のためとて一辺にても念仏☆(←★から☆に修正)
【第九章】
他力の悲願はかくのごときのわれら←他力の悲願はかくのごとし われら☆
【別序】
聖人のおおせにあらざる←上人のおおせにあらざる
【後序】
ひとのくちをふさぎ相論をたたんために←ひとのくちをふさぎ相論のたゝかひかたんがために
故親鸞聖人のおおせごと←古親鸞のおおせごと
【流罪記録】
幡多←幡田
浄聞房←浄円房
奏聞←奏問
修正
1.最初にあげたものに誤字・脱字がありましたので、少し修正しました。
本質的には変わっておりません。
2.「総じて」・「惣じて」については、本によってかなり相異・混乱がありますので削除しました。
3.第五章については、調べた結果、東本願寺の仮名聖教(江戸時代の版本)の一種にこのような記述がありました。しかし、今日のほとんどの歎異抄解説書では、古写本にない「念仏一辺にても」は採用していません。