「21世紀の浄土真宗を考える会」ブログ(アーカイブ)

親鸞会除名後、多くの方に浄土真宗を伝え2012年7月にご往生された近藤智史氏のブログ

歎異抄第4章を読む その3 聖道門

2009/09/10(木)

聖道門についてこんなブログで説明することは難しいですが・・・
一言で言うと、聖道門とは「この世界で聖者の位に入り、仏果を得る教え」です。
日本では、華厳宗法相宗律宗天台宗真言宗日蓮宗禅宗臨済宗曹洞宗黄檗宗)などがあります。
これ以外にも多くの宗派がありますし、歴史上存在し、すでに消滅した宗派もあります。

さて、歎異抄第4章の話とはずれますが、善導大師(613-681)時代の宗派で、善導大師と関係ある(というか善導大師が正された)ものについて少し述べます。
長文でうんざりする方は、下の方をまず見て下さい。
【摂論学派・摂論宗
梁の武帝の招きでインドから中国へやってきた真諦三蔵(499-569、波羅末陀)の訳出した『摂大乗論』にもとづいて成立した学派です。
真諦は『摂大乗論』(無着菩薩著)の他に『十七地論』(瑜伽師地論の一部、無着菩薩あるいは弥勒菩薩著)『摂大乗論釈』(世親菩薩著)『中辺分別論』(弥勒菩薩著か)『倶舎論偈』『倶舎釈論』『大乗起信論』『如実論』などを訳しました。
この真諦三蔵の弟子、そのまた弟子が形成したのが摂論学派です。
弟子に慧、法泰、道尼など
それらの弟子に恵曠、道岳、靖嵩など
そのまた弟子に智凝、法常など
さらにその弟子の僧弁、智儼など
と続きました。
これとは別に直接の弟子ではないですが曇遷がいます。
(当時の「宗」「学派」は今日の宗派とは違いますので、これらの人たちは必ずしも摂論宗に数えられないこともあります)

摂論学派に関して知っておくべきことは、『摂大乗論』の「応知勝相品」に出ている「四意趣」です。
四意趣とは釈尊が相手の性格や好みに応じて四種の方便説をもって導かれたことを指します。
・平等意 差別にとらわれた者を導く説き方
・別時意 懈怠の障りを除くために用いる説き方
・別義意 法を軽んずる心を破るために用いる説き方
衆生楽欲意 向上心を起こさせるための説き方
の4つです。
別時意とは、本当は長い時間がかかる修行ですが、そう聞くとやる気をなくすので、せめて少しでも行をすることによって仏縁を結ばせようとして、遠い未来に受ける結果がまるですぐにでも獲られるように説くことを言います。
貯金の嫌いな怠け者に1円ずつ貯金すれば、すぐに1000円になるぞと勧めるようなものです。
摂論学派の人たちは、観無量寿経に説かれている念仏は、この別時方便説であると、浄土の教えを攻撃したのでした。
もちろん、『摂大乗論』を書かれた無着菩薩や『摂大乗論釈』を書かれた天親菩薩が、本願念仏を別時方便だと言われたのではなく、これらは摂論学派の学者の説です。

法相宗
玄奘三蔵とその弟子の慈恩大師基によって大成された瑜伽行唯識学派です。
天親菩薩が書かれた『唯識三十頌』を護法が釈した『成唯識論』にもとづいています。
法相宗の教義は一切法を五位百法に分類します。
五位とは心法、心所法、色法、不相応行法、無為法です。
このうち心法で八識が説かれます。
また、相分・見分・自証分・証自証分の四分説が説かれます。
さらに五性各別を認め、一切皆成仏を許しません。
この点が一乗仏教の天台宗などとは大きく異なります。
日本でも法相宗徳一と最澄との間に、三一権実の論争が行われています。
三劫成仏(三大阿僧祗劫+百大劫という、長期の修行をしなければならない)や歴劫成仏と言われるものの代表が法相宗です。
簡単に言うと、「そんなに簡単に救われるはずがない。長い時間がかかるのだ」ということです。
この法相宗の学者も念仏別時意趣説をもって、阿弥陀仏浄土教を否定しました。

【その他の諸師】
天台宗 天台智者大師智(538-597)
三論宗 嘉祥寺吉蔵(549-623)
地論宗 浄影寺慧遠(523-592)

これらの人たちの考えは、摂論宗法相宗の考えとは異なり、念仏別時意趣説ではありません。
しかし、観無量寿経に説かれている凡夫が往生できる浄土は報土ではなく、応身応土(娑婆世界とは異なり修行に適した世界)であって、この浄土に往生するのは成仏への道の補助的な意味を持つと説きました。
簡単に言うと、「善・修行のできない者が阿弥陀仏の報土へ行けるはずがない。善・修行を励まなければならない」ということです。


親鸞会『会報 第2集』では、

天台大師智者
嘉祥寺吉蔵
浄影寺慧遠

が『摂大乗論』の別時意をもって、念仏別時方便説を唱えたように書かれていますが、
これは誤りです。